それは小学1年生の秋のことだった。

 小日向の家族とも馴染み、麻衣という友達も出来て、新しい生活にも結構慣れてきてはいたが、通っていた学校に友人はいなかった。

 俺の当時通っていた小学校は大体がこの地区の幼稚園から進学した生徒が多く、基本その幼稚園の生徒だった男子達がグループを組んで仲良くしていたのがメインだったため、余所者だった俺がどっかの仲良し集団に入り込む隙間があまりなかったことや、新しい生活に戸惑っていた頃に親切にも俺に話しかけてくれた奴を拒絶してしまったことなどが原因だ。

 でも、特にいじめられるようなこともなかったし、毎日のように学校が終わった後は麻衣と遊んでいたので、あまり気にしていなかった。

 つか、口すら利いた覚えがないがために、クラスメイトの顔と名前さえほとんど一致しなかった自信がある。

 この頃、顔と名前を照合出来たのは、1人の女の子だけだったかもしれない。

 まぁ、その子とも、挨拶すらしないしロクに話したことはなくて、ただ席替えしても何故か大抵隣の席になったり、彼女が言いたいことをあまりはっきりと口にすることが出来なかった引っ込み思案な性格だったせいで友達らしい友達がいなくて、更に何の嫌がらせか、クラスが男女共に奇数だったがために体育で2人組を作る際には、欠席する児童がいない時以外は必然的に彼女と組む機会が多かったから、自然と名前を覚えただけだったわけだが。

 ということで、誰とも仲良くすることもなく昼まで無為に時間を浪費してから、麻衣と遊ぶ日々を繰り返したある日のことだった。

「……」

 俺はいつものように無言のまま教室に入って、まっすぐ自分の席まで行って座った。

 で、何を思ったか、ふと隣を見てみると、月村さん(大人しくて自己主張出来ないがために友達が出来ずに俺と組まされることが多い女の子)が青褪めた顔をしていることに気付いた。

 さすがにこのまま授業を受けていたら倒れそうだなというのが分かったので、保健室に行くことを薦めた方が良さそうだと思った。

 しかし、お互い顔と名前は分かっていても、今までほとんど喋ったことがなかったため、話しかけられるのが躊躇われた。

 だからと言って、黙って倒れるのを見届けるわけにもいかない。

 少し悩んだ挙句、俺はノートに思ったことを書いて、彼女の肩をつついて見せた。

『きぶんわるそうだね。ほけんしつに行ったほうがいいよ』

 しかし、青褪めた顔のまま俺のノートを見た月村さんは、小さく首を横に振るだけだった。

 いくら体調が悪くても、学校に来た以上は授業を休むわけにはいかないとでも思ったのだろうか。

 それとも、保健室に行ってしまったら、他のクラスメイトや担任の先生に心配させて迷惑をかけてしまうのが嫌だったのか。

 どちらにしろ、こんな状態で授業を受けても遅かれ少なかれ確実に倒れるってことは分かっていたので、何とか保健室まで連れて行ってやりたかった。

 そして、再び俺が考えた結果、さっきの文章の下に新しく言葉を書いて、また月村さんに見せた。

『じつは、ぼく、ちょっとからだのちょうしがわるいみたいなんだ。だから、ほけんしつまでついてきてくれないかな?』

「…………」

 調子が悪そうな顔でちょっと考えてから、彼女がこくりと小さく頷いたのを見て、俺は礼をするように軽く頭を下げてから、立ち上がって体調不良を表すためにのっそりのっそり歩いて教室を出た。

 少し後に、月村さんもいかにもすぐ倒れそうな様子で廊下まで来た。

 それを確認してから、俺はしゃがんで彼女に背中に乗るように勧めた。

 そんな俺を見て、大人しいクラスメイトの少女が驚いた。

「こひなたくんのちょうしがわるいんじゃなかったの?」

「あれはうそだよ」

 俺は教室を出てからすぐに考えをばらした。

「つきむらさんはじぶんからほけんしつに行こうって言いそうになかったから」

 だから、あえて俺が調子悪いふりをして、逆に保健室まで連れ添ってほしいと頼んだ。

 彼女は自己主張が苦手な性格だったから、人からのお願いとかに弱くて嫌でも引き受けちゃうような子だったからな。

 そして、目論見どおりに、彼女を教室から連れ出すことに成功したってわけだ。

 ……まぁ、騙したようだから罪悪感は感じたけど、あの際だから仕方なかった。

「だ、だいじょうぶだよ。ちょっと夜ふかししちゃっただけだから……」

 慌てて自分は平気だと主張した月村さん。

 しかし、否定する勢いがやっぱり弱く、言葉にも力がこもってなかった。

 だから、俺は1つ溜息をついてから、諭すように反論した。

「ただのねぶそくなら、そんなに青いかおにならないよ。ほんとうにだいじょうぶって言うんなら、ぼくにも分からないようにしなよ」

「……」

「それと、もしじゅぎょう中にたおれられたほうが、ぼくやみんなにもめいわくかけちゃうってこと、分かってた?」

「……ごめん」

 図星を食らったような顔で弱弱しい声で月村さんが俺に謝った。

 この時、彼女は他の人に迷惑をかけてしまうと思ったから、保健室に行こうとしなかったんだと分かった。

 だからどうしたと思いながら、俺は呆れたように声をかけた。

「あやまらなくていいから。それよりも早くのって」

「…………うん」

 頷いて遠慮がちに俺の背中に乗っかった。

 その時に、失礼ながら結構重いって感じてしまったのは内緒だ。

 そう思ったのは、まだ男女の間にあまり体重差がなかったせいかもしれなかったけど、やっぱり女性に重い太いは禁句だしな。

 閑話休題。

 俺が月村さんを背中に負ぶって保健室を目指す途中は2人ともほとんど無言だった。

 ただ、1度だけ月村さんから口を開いて会話が続いた。

「…………ごめんね、こひなたくん」

「だからあやまらなくていいって。それより、つぎにちょうしがわるいと思ったときは、じぶんからほけんしつに行くんだよ?」

「……うん」

「まぁ、だれかといっしょじゃないとさみしいって思ってるなら、ぼくに言ったらつきあってあげるけどさ」

「……ありがと」

「べつにつきむらさんのために言ってるんじゃなくて、じゅぎょう中にたおれたらうるさくなってこまるって思っただけだから、おれいはいらないよ」

 そんな風に俺がツンデレ的に言葉を返して、会話が終了して目的地まで無言になった。

 で、保健室に着いて担当の先生に事情を話して、月村さんをベッドに寝かせてあげてすぐに教室に戻ろうと思ったのだが……。

「ん?」

 月村さんの意外と強い力で腕を掴まれて身動きが取れなくなってしまったのと、保険の先生に一緒にいてあげてと頼まれたこともあって、結局1時間目をサボることになった。

 まぁ、嫌いな算数の時間だったから、受けずに済んでラッキーと思ってしまったことは今でもぼんやり覚えてる。

 ……あと、保険の先生の俺達を見つめる変に温かい笑顔もな。

 で、1時間目が終わったのと同時に、月村さんの俺の腕を握る力が弱まったので、保険の先生に彼女を任せて教室に帰った。

 それで、担任に勝手に授業を休んだことを怒られながら、月村さんは体調が悪いようだったから保健室で寝てることは伝えて、解放された。

 その後に、ツインテールのクラスメイトの女子に話しかけられた。

「こひなたくん、だいじょうぶなの?」

 俺が出て行く時の調子の悪そうな演技をマジに取ってしまったらしい。

 結構、心配した様子だった。

 それが分かった俺は、まず誤解を解くことにした。

「つきむらさんがかなりしんどそうだったけど、じぶんからほけんしつに行くような子じゃなかったから、ぼくがきぶんをわるいふりをしてつきそってもらうようにたのんだんだ。だから、ぼくはだいじょうぶだよ」

「そう。なら、よかったよ」

 ホッとした様子を見せる月村さん以上に接したことのないクラスメイトの少女に首を傾げたくなる気持ちを抑えて、心配させたことを謝った。

「たかまちさん、ごめんね、しんぱいさせちゃって」

 話したことは全くなかったに等しかったけれど、俺は彼女の顔と名前は知っていた。

 その理由は単に家が近かったからで、登下校のときに時々見かけるっていうものだったけれど。

「ううん、気にしないで。ところでつきむらさんはだいじょうぶなの?」

「今日おとなしくしてたらよくなるって。きになるなら、つぎの休みじかんに見に行けばいいよ」

「うーん、あの子とはほとんどはなしをしたことがないから、やめておくよ。こわがらせちゃうだろうし」

 これが近所に住むクラスメイトの高町さんとの初めての会話の全貌だったりする。

 余談だが、月村さんは授業が終わらないうちに、家の人に迎えに来てもらって、早退することになった。

 それを聞いた俺は、幼心ながら明日は元気な姿で学校に来れることを祈った。

 

 

 翌日。

「……」

 俺はいつものように無言で教室に入った。

 当然、誰にも挨拶されることはない。

 が、この日は違った。

「あ、あのっ……お、おはよう!」

 隣の席に座る紫色のウェーブ状の髪の毛を背中まで伸ばした少女から挨拶された。

 俺は驚きのあまり目を大きく見開いて月村さんの方を振り返った。

 朝の挨拶をされたという事実自体もそうだが、まさかこの消極的な少女の方から挨拶されるとは。

 俺は驚愕を隠せないまま、でも、無視するわけにもいかないと思い、なんとか口を開いた。

「……おはよう」

「あ、あのね、きのうはありがとう」

 前日に保健室まで負ぶって連れて行ったことで、月村さんの好感度が上がったようだ。

 それで、彼女の方から自発的に俺に挨拶しようと思ってくれたらしい。

 俺はそれが分かって照れたのか分からないが、ぶっきらぼうに返したような気がする。

「つきむらさん、げんきになったみたいでよかったよ」

「こひなたくんのおかげだよ」

 感謝の笑みを浮かべる彼女の顔を直視できずに、俺はそっぽ向いてしまった。

 多分、あの時が初めてだったな。

 月村さんの笑顔を見たのは。

 で、あの日を境に彼女は俺に事あるごとに、俺に積極的に話しかけてくるようになった。

 

 例えば、体育で2人組で準備体操をする時。

「あ、あのね、こひなたくん、わたしとくまない?」

「あ、うん、いいよ」

 いつも最終的には余って組むことになるのに、自分から誘ってくるなんて珍しいなって思いながらも断る理由は皆無だったので、2つ返事で頷いた。

「あ、ありがとっ」

「?」

 いつも通りのことなのに、すごく嬉しそうな彼女の顔を見て、俺はきょとんとした。

 どうでもいいけど、この時に初めて月村さんは男女問わずにクラスでトップレベルの運動神経の持ち主であることを知った。

 

 休み時間に入るや否や、月村さんが自分から声をかけてきた。

「あ、あのね」

「うん」

「さんすうのしゅくだい、やってきた?」

 前の授業の時に、教科書の練習問題を課題として出されていた。

「うん。合ってるかどうかじしんはないけど」

「よ、よかったら見せてくれる? わたし、わからないもんだいがあったから……」

「ぼくのでよければ。……はい、これノート」

「ありがとう」

 まぁ、こんな会話は日常的なものだけど、月村さんも俺も前までは話しかけることも話しかけられることも、お互いが会話することもなかったからな。

 だから、あの時は少しびっくりした記憶がある。

 

 昼休み。

「こ、こひなたくんっ」

「どうしたの?」

「い、いっしょにおべんとうたべよう?」

「うん。いいよ」

「ありがとう。今日はおてんきがいいから、おくじょうに行こ?」

「いいね」

 この頃の俺は基本的に屋上や中庭など、教室以外の場所で昼飯を食っていたので、共にする人間が出来ただけで殆ど状況に変化はなかったりする。

 外に出たのは、単に教室で食べると他のクラスメイト達の煩い雑談やらを耳にするのが嫌だっただけだが。

 まぁ、でも、学校で誰かと一緒に昼飯を食べるというのは当時の俺には新鮮だった。

 あまり2人の間に会話は無かったけれど、別に気まずさは感じていなかったし、月村さんも居心地が悪そうには見えなかったと思う。

 

 そして、放課後になって教室から出る前。

「あ、あのっ」

 麻衣が待つ公園に向かおうとする俺を月村さんが呼び止めた。

「なに?」

「えっと……ば、ばいばい!」

「あ、うん、ばいばい」

 俺が月村さんからしてきた別れの挨拶を返すと、彼女は恥ずかしそうにしながら俺より先に教室から出て行った。

 それを俺は不思議に思いながらも、深くは考えずにいつもの待ち合わせの公園へと向かった。

 

 と、こんな感じの日々が3日ぐらい続いた日の放課後。

 俺がいつものように麻衣の家の公園まで行って合流した時のことのだった。

「おまたせ、まいちゃん」

 この頃はまだまいちゃんと呼んでいたが、今となってはいくら回想だろうがちゃんを付けて呼ぶのはむず痒いので麻衣と呼ばせてもらっている。

「あ、ゆうまくんだ、こんにちはっ」

 俺に気付いた麻衣がいつもの人懐っこい笑顔で近付いてきた。

 ……ここまではいつも通りだった。

「きょうは、おともだちもいっしょなんだね」

「え……?」

 俺が麻衣の言葉に驚きながら周囲を見渡したら、10歩ぐらい後ろに、つい30分程前に別れの挨拶をかわした隣の席に座るちょっと話す機会の増えた少女の姿が見えた。

 彼女は俺の視線に気付くとビクッと震えた。

「……つきむらさん?」

「こ、こんにちは」

 俺が名前を呼ぶと引き攣った表情で紫髪のクラスメイトがペコリと頭を下げた。

 何でこんなところにと、俺も驚いて言葉を発せないでいると、麻衣が笑顔で口を開いた。

「うれしいなぁ。ゆうまくんがおともだちをつれてきてくれるなんて」

「あ、いや……」

 この時の俺は、多分月村さんのことを友人だと思っていなかった気がする。

 学校の中で一番仲は良かったけど。

 だから、麻衣の言葉を反射的に否定しようとした。

 が、それより先に麻衣の方が月村さんの方に近付いた。

「わたしはあさぎりまいって言うの。ゆうまくんとはおともだちなの。あなたは?」

 初対面だと言うのに、麻衣は物怖じもせずに自分から月村さんに自己紹介した。

 初めての友人であるこの少女は昔から人見知りをしない性格で、俺と違い時分の学校の中で既に友人を作っていて、時々連れて来てくれたこともあった。

 学校の友達だけで遊びたい時もあるだろうに、彼女は約束もしていないのに毎日のように出会いの公園まで俺を待ってくれるその理由は何なのか。

 聞いたところ、当時の麻衣はこう答えた。

『クラスのともだちなら、がっこうのある日はいつでもあそべるけど、ゆうまくんとはがっこうがないときしかあそべないから』

 と。

 今思えば実に子供らしい理由だけど、幼い俺はその言葉をすごく嬉しく思った。

「は……はじめまして。つきむら、すずかです。こひなたくんのクラスメイト、です」

 対照的に月村さんの方は、たどたどしく消え入りそうな声で自己紹介した。

 自己紹介っていうのは、ある意味一番地の性格が出やすいものじゃないだろうかと、その時のことを振り返るたびに思う。

「そうなんだー。よろしくね、すずかちゃん」

「あ、はい、こちらこそ……あさぎりさん」

 名字で呼んだ月村さんに麻衣が不満そうな顔を向ける。

「むー、ゆうまくんはおとこの子だから、いきなりなまえでよぶのはずかしいから分かるけど、おんなの子どうしなんだから、なまえでよんでよー」

「え、あ、ごめんなさい。……ま、まいちゃん」

 たじたじにされながらも名前で呼んだ月村さんに、一転して満足そうな顔を向けた。

「うん。それじゃあ、今日は3人であそぼっか」

 自分のペースで話を進める麻衣に俺が口を挟んで止めた。

「まいちゃんまって。まず、つきむらさんがだいじょうぶかどうかきかないと」

 こんなところまで来た時点で多分予定はないんだろうとは思ったが、確認しておかないと、もし他の用事があったら大変だからな。

「わ、わたしはだいじょうぶだよ!」

 聞く前に向こうの方から答えた。

「やった! それじゃあ、今日はゆうまくんとすずかちゃんの3人であそんじゃおーっと」

 嬉しそうにはしゃぐ麻衣。

 その一方で、月村さんがこっそりと俺に付いて来た理由を教えてくれた。

「わたし、こひなたくんといっしょにかえろうって言いたかったんだけど、いつも何かようじがあるみたいだったから言えなくて、でもやっぱりもっとなかよくなりたかったから、がっこうがおわってから何をしているのか、気になっておいかけてきちゃったの。……ごめんなさい」

 正直に思っていることを打ち明けてくれた彼女を怒るつもりなんて全く無かった。

「あやまらなくていいよ。そんなことより、つぎからはいっしょにかえりたいときは先に言ってよ。ただ、ぼくは、がっこうのあと、いつもよりみちしてまいちゃんのところまであそびにいくけど、それでもよかったら、いいよ」

「……ありがとう」

 月村さんがお礼を言ったところで、2人きりで話す俺達に痺れを切らした麻衣が頬を膨らませながら近付いてきた。

「2人だけでなかよくしないのー!」

「「ご、ごめん……」」

 で、この日は空が暗くなりきる前まで3人で公園で遊んだ。

 月村さんは最初戸惑っていたけど、別れる前には麻衣とすっかり打ち解けて、笑顔を見せるようになった。

 そして、帰る前には。

「あの……また、いっしょにあそんでくれる?」

「もちろんっ。むしろ、わたしからおねがいしたいぐらいだよ」

「あっ、ありがとう」

 そんな会話すらしていたぐらいだ。

 その後、俺は月村さんを家の近くまで送ってから、自分の家に向かった。

 隣に並んで歩く彼女は、いつもより明るくて口数が多かった。

 

 

 さらに、それから1週間も経たない後の放課後には月村さんから誘われた。

「あのねっ、きょうは、わたしのいえにこない?」

 当然、俺はいつもの公園まで麻衣を誘いに行くつもりだった。

 しかし、勇気を出して誘ってくれた月村さんを無碍にしたくもなかった。

 だから俺は、こんな妥協案を口にした。

「まいちゃんもさそったらだめかな?」

「もちろんだよっ」

 それから俺は月村さんと一緒に公園まで麻衣を迎えに行って、今日は彼女の家で遊ばないかって聞いたら2つ返事でOKした。

 そして、この日は3人で月村さんの家で夜まで遊んだ。

 勿論、彼女の家に行くのは初めてだったが、色々な意味で印象に残った出来事だった。

 家のでかさに、メイドさんの存在に、大量に飼われた猫達に、お姉さんの綺麗さに。

 ……まぁ、何と言うか、凄かった。

 その時にメイドさんだったかお姉さんだったかはっきりと覚えていないけど、家の人に仲良くしてくれてありがとうと、とても嬉しそうに言われたのは覚えている。

 

 

 と、まぁ、こんな感じに、名前で呼び合うことは出来ないものの徐々に月村さんと打ち明けていき、時には麻衣を交えて3人で遊んだりして、楽しい日々を送っていたわけだ。

 しかし、これから間もないうちに俺と月村さんとの関係が変わってしまうような事件が起きてしまうのだが、キリがいいから今回はここで回想を切ることにしよう。

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